地域外に販路拡大についての支援事例

 【相談:消費期限を延ばし、地域外に販路を拡げたい】

伊平屋島で冠婚葬祭用として日常的に使われているナントゥもち、うずまきもち、黒糖あがらさー(カステラ)を製造販売している。島でも人気が高いし観光客にも喜ばれている。島外で販路を拡げたいが、賞味期限が短いので流通がむつかしい。賞味期限を延ばす方法はないか?

相談事業者基本情報

・企 業 名   海やから千増(せんぞう)
・業   種           菓子・惣菜の製造販売
・所 在 地           伊平屋島
・資 本 金           なし(個人事業)
・創   業   2001年
・従 業 員           5名(家族経営)

【 回 答: 特産品として島内販売】

今回はよろず支援拠点のサポーターである食品の専門家に加わってもらいチーム支援で対応した。

「海やから千増」の名前が示す通り、元々は漁師であるご主人が獲ってきた魚を販売することから始まったという。刺身から惣菜などまでやってきた。伊平屋村の生活研究会のメンバーとして地元特産品づくりにも参画し、昔ながらのナントゥ等の伝統菓子を作って売るようになった。島民の冠婚葬祭に欠かせない折詰料理(チトゥ)としても需要が高い。島のスーパーや港の売店、農協や漁協でも売るようになって、観光客からの評判も良い。平成23年に特産品の支援事業で、名護市許田の道の駅に出したところ人気が高かった。しかし、賞味期限の短さもあり、離島から島外への安定的供給はハードルが高い。

今は自社で賞味期限を設定しているが、カビの発生を抑えるために真空パック包装で脱酸素剤を使用している。味や品質に全く劣化のない9日間を賞味期限に設定してきた。この方法で良いのか、また賞味期限を延ばす方法はあるのか、との相談であった。

専門家の見解としては、まずもちは原理的に日持ちさせるのは難しいとのこと。またカビを防ぐ方法は製造環境を清潔にすることで一定程度達成できること。逆に真空パック詰食品ではボツリヌス菌の増殖を抑えることが大事であること。冷凍冷蔵保存、流通が二つの課題に対応できること等が伝えられた。

以上のことから、相談者の判断はこれまで通り島内で販売して行くというものであった。島のお祝い事や法事は、大きな売上げではなくとも安定した販路として存在する。顔の見える作り手との信頼関係を通して安心感があるからだ。その評判に根差して、島を訪れる観光客に地元の特産品として安心して買ってもらえる。どうしても送ってほしいという島外の人がいたら安全に冷凍で送ってあげ、解凍すれば作りたてのおいしさを復元できる。

ナントゥもうずまきもちも柔らかくしっとりした食感で、甘すぎず飽きの来ない味である。素材も島の黒糖やウッチン、紅イモなどが使われていて、まさに島の特産品である。黒糖あがらさーもふわふわした食感で粉っぽさやボロボロ感は一切ない。この島に行かないと、このおいしいものが食べられない。これはこれで付加価値である。ぜひ伊平屋島に行って味わってほしい逸品である。

お問い合わせは「海やから千増(せんぞう)」。電話:0980-46-2855  facebook
 

*この記事は2015年2月22日の沖縄タイム(日曜版)『よろず支援拠点 カルテ@沖縄』に掲載された記事からの転載です。

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