CASE356 経営者保証を解除したい

【回答】

経営者の長男は、大学卒業後に東京の会社へ就職し家庭を設けている。当初は後継者として事業を引継ぐことに難色を示していたが、帰省した時に父親の会社への想いを伝えられて承継を真剣に考えるようになった。しかし、家族もいるため、本人だけではなかなか決断できない。特に大きな問題点が銀行からの借入金8千万円の保証人の引継ぎだった。

事業承継においては経営者保証が障壁となって進展しないケースが多い。国もこの状況を重く受け止め、事業承継に焦点を当てた「経営者保証ガイドライン」の特則を策定し2020年4月から運用している。その中で新旧経営者による二重保証を求めることを原則禁止し、金融機関等には本特則に即した対応を促している。それに準じて国の支援機関である沖縄県事業承継・引継ぎ支援センターに、経営者保証の解除を支援する専門コーディネーターが配置され、金融機関との調整役も担っている。経営者保証の解除には一定の財務的要件があり、全ての事業者が解除できるわけではない。その場合でも条件をクリアするためのアドバイスをしてくれる。

早速、相談者の了解を得て、同センターの専門コーディネーターに連絡を取り、連携支援にあたった。決算資料等に基づき経営者保証解除のための要件をチェックしたところ、財務面での課題がいくつか見えてきた。そこで、次の相談からは東京の長男にもリモートで参加してもらい、経営者保証の解除についての相談以外にも事業承継全般における課題を整理していくことができた。

現在は、それらの解決策を見出すべく、当拠点の他のコーディネーターも加わり、具体的な進め方を話し合っている。長男も積極的に議論に参加してコミュニケーションも活性化してきたので、相談者にも笑顔が見え始めた。

事業承継する上で、後継者が安心して継げる道筋を示すことも現経営者の大きな役目である。当事者では気づきにくいことも多いため、専門的な知見を持つ第三者を交えて話し合うことも有効なので、相談することをお薦めしたい。